伊坂幸太郎「ラッシュライフ」のあらすじ・感想を紹介する

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ラッシュライフ

久しぶりに伊坂さんの小説を読んだけど、やっぱりこの人の作品を読むと、「ジグゾーパズルを完成させた達成感」に似た体験を味わえた。

早速、レビューを書いていく。

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「ラッシュライフ」のあらすじ

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

「ラッシュライフ」の感想

本作「ラッシュライフ」は、泥棒・宗教にハマった青年・無職の男・不倫中の女性カウンセラーの4人の物語が平行して進んでいく形式で、書かれていた。

最初の内は少々退屈な展開が続いていたものの、4人の物語が徐々に1つの形に収束されている様子や、前半で登場した伏線が回収されていくのを見ると、なんとも言えない爽快感があった。

伊坂幸太郎の特徴である効果的な「引用」の使い方

伊坂幸太郎の小説の1つの形としては、「音楽の歌詞や映画のセリフ等の引用が出てきて、その引用部分が話の内容とうまく噛み合う」ことが挙げられる。

例えば「ゴールデンスランバー」では、主人公が首相爆殺の濡れ衣を着せられて何とか警察の包囲網をかいくぐって逃げまくるのだが、ひと時ついた時に主人公が、ビートルズが故郷に帰れない悲しさを歌った「ゴールデンスランバー」の歌詞を頭の中で思い浮かべる。

「Once there was a way to get back homeward」と「ゴールデン・スランバー」の歌詞を頭の中で反芻する。今はなくなった、懐かしい場所のことを思い出す。

「ゴールデンスランバー」p.589

今作「ラッシュライフ」でも、引用の使い方が見事だった。

冒頭で「ラッシュ」の4通りの英語の意味が書かれていて、最初はそれら4通りの意味が、4人の登場人物の人生を暗示しているのだろう、と大半の読者は推測するだろう。

しかし、物語が進むにつれて「ラッシュライフ」の本当の意味が分かるようになると同時に、4人のストーリーは同じ意味を持っていたことに気付いて、妙な達成感を感じることができる。

悪党ほど人を惹きつける魅力があった

また、伊坂小説の特徴に「悪党ほど魅力的な人物に見える」と言うのがあります。

今作でいうと、泥棒の黒澤がそれに当たる。

他人の家に入る前は、その人の仕事や趣味、これまでの人生なども調べる徹底ぶりで、強盗を済ませた後は「現金のみを取りました」と言うメモを残す、と言う変わった強盗として描かれている。

いつもは徹底した仕事ぶりを見せるのだが、本編では爪が甘い部分が出てしまい、泥棒をしている最中に家の主人らしき人が帰ってきて、その人と鉢合わせてしまう大失態を犯す。

しかし、それが思いもよらぬ事態を引き起こし、物語はこのシーンを境に一気にスピード感ある展開に変わっていく。

本作で好きだった文章・セリフ

旅行客は細菌で、山賊のほうは抗生物質だ。それを喩え話に置き換えているだけなんだ。抗生物質が新しくなり、細菌が撲殺される。そういう話だ。

宗教団体に入っている青年の先輩・塚本が言ったセリフ。

正しさなんて見方によって変わるよ」と言う話を、細菌と抗生物質と言う、生命の生存競争で例えているのが好きだ。

「世の中は残念ながら金だよ。喜ばしいことに、と言ってもいいが」

泥棒の黒澤が、画商ビジネスに失敗した友人に言い放った一言。

ちょっとニヤニヤしながら、この世の真理を言った黒澤の姿を想像してしまう。

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