簿記では材料の消費の計算方法として「継続記録法」と「棚卸計算法」がありますが、意外にも、この2つの計算方法のメリットや仕訳を使い分けていない人も多いのではないでしょうか?
かく言うボクも最近までは、この2つの計算方法を使い分けできなかったのですが、この2つのメリットや仕訳をマスターしたので、備忘録がてら、仕訳の方法を紹介していきます。
ぜひ、参考にして下さい。
継続記録法と棚卸計算法の違いは?
「継続記録法」とは、材料を消費するたびに仕訳をする方法で、「棚卸計算法」は、期末に「期首材料在庫+材料仕入量-期末実地材料在庫」と計算をして材料の消費数量を求めて、期末に材料の消費の仕訳をしていく方法です。
このような説明を聞いても「お前何言ってんの?」とピンとこないかもしれませんが、具体例を使って実際の仕訳方法を見ていくと、イメージがしやすいです。
継続記録法と棚卸計算法の仕訳のやり方
期首に@100円の材料が50kgある。先入先出法で計算をしていく。
1、@500円の材料を200kgを掛で仕入れた
2、材料を150kg消費した。
3、期末を迎えた。材料の帳簿棚卸高は100kg、実地棚卸高は50kgだった。
まず1の材料の仕入れの時の仕訳ですが、材料の仕入の仕訳は、継続記録法でも棚卸計算法でも全く同じです。
1、(借)材料 10000 (貸)買掛金 10000
しかし、材料を消費した際にどのように仕訳をしていくかが、全く異なります。
継続記録法での2と3の仕訳
今回は先入先出法で計算していくので、材料150kgの消費額は、期首材料の「200円×50kg=10000円」と期中で仕入れた「500円×100kg=50000円」の計60000円が、材料の消費額になります。
2、(借)仕掛品 60000 (貸)材料 60000
そして、3の場面で期末を迎えて、「棚卸減耗費」を計上します。
今回は、帳簿棚卸高が100kg、実地棚卸高が50kgなので、「500円×(100kg-50kg)=25000円」となり、棚卸減耗費を25000円計上します。
3、(借)棚卸減耗費 25000 (貸)材料 25000
このように、継続記録法は、よく簿記の問題で見かけるような仕訳のやり方をしています。
会計法でも、継続記録法は「原則」とされており、普通はこの方法で仕訳をするようになっています。
棚卸計算法での2と3の仕訳
継続記録法では、2の場面の「材料を150kg消費した」時には仕訳を行いましたが、棚卸計算法では材料を消費した時に仕訳は行いません。
しかし、期末を迎えた3の場面で材料消費の仕訳を行います。
期末での仕訳のやり方としては、まずは「期首材料在庫+材料仕入量-期末実地材料在庫」を計算して、材料の消費量を求めます。
今回は、期首の材料が50kg、材料の仕入量が200kg、実地棚卸高が50kgなので、上の式に当てはめると「50-200-50=200kg」消費したことが分かります。
そして今回は先入先出法を採用しているので、この消費した200kgの内訳は、50kgが期首材料(@100円)で150kgが材料仕入高(@500円)となり、材料の消費額は「50kg×100円+150kg×500円=80000円」になります。
よって、棚卸計算法での期末(3の場面)の仕訳は、
3、(借)仕掛品 80000 (貸)材料 80000
となります。
継続記録法と棚卸計算法の違いやメリットは?
上の具体例を見れば分かるように、継続記録法は、材料を消費するごとに一々仕訳をしていかなければならず面倒ですが、その分、計算の正確性が高まります。
それに、期末時に「棚卸減耗費」を把握できるので、この結果を基に「何で無駄に材料を消費してしまったのか?」と言う原価分析が可能になり、今後の原価管理に役立てることができます。
一方、棚卸計算法は、期末時に一括で材料の消費量を求めるので、計算がめちゃめちゃ楽なのですが、その反面、計算の正確性は劣ります。
それに、上の具体例を見れば分かるように、「棚卸減耗費」を計上できないので、「どのくらい材料を無駄にしてしまったか?」の把握は難しくなります。
このように「継続記録法は正確性、棚卸計算法は計算スピード」に優れていて、どちらも一長一短と言った所です。
なので、実務では主要な材料は継続記録法で仕訳をしていき、鉛筆とか接着剤の様な重要ではない工場消耗品などでは、棚卸計算法を使っている、と言う場合が多いです。