今回は、プロではすでに廃れていますが、アマ(特に初級者)で根強い人気が残っている「メリケン向かい飛車」について解説していきます。
メリケンは、対策を知らなければ、一瞬でやられてしまう恐ろしい戦法なので、居飛車党の方は、ぜひ、本記事で対策を身に付けてほしいです。
メリケン党にとっては、どのタイミングで仕掛けるのが上手くいくのか、を知ってもらえればと思っています。
メリケン向かい飛車の基本図
上の1図は、メリケン向かい飛車の基本図です。
先手としては、後手陣に隙があれば一気に攻め倒したいし、後手としては、攻められないように細心の注意を払う必要があります。
もし、1図で▲86歩△同歩▲同飛と攻めるのは、以下、△同飛▲同角△87飛(変化1図)があるので、無理です。
角と銀と桂の両取りが厳しすぎます。
▲78金には△64歩としよう
ということで、第1図からは、▲78金△64歩と進むようにしましょう。
この△64歩は何気ない1手に思えますが、もし、△64歩ではなく、△54歩などという手をしていたら、▲86歩△同歩▲同飛△同飛▲同角(変化2図)と進むと、先手陣は飛車の打ち込みがないのに対して、後手陣は飛車の打ち込みがあるので、後手不利となります。
しかし、2図の様に、△64歩としておくと、▲同角と飛車交換をした後に、△65歩(3図)と反撃ができるわけなんです。
以下は、▲65同歩は、もちろん△99角成で後手有利だし、▲77角△66歩と進んでも、▲66同角なら、△同角▲同銀△45角が、将来的に先手の飛車で取られそうな自陣の81の桂を守りながら、両取りを狙った絶好の一手だし、△66歩に▲同銀であれば、△65歩▲55銀△54歩▲同銀△77角成▲同桂△89飛(変化3図)で、やはり後手優勢です。
このように見ると、先手は居玉で攻めたことで、攻めの反動が大きくなっている気がします。
と言うわけで、先手は攻めるのではなく、駒組みをしていく必要があるみたいです。
ちなみに、ここまで紹介した変化は、メリケン向かい飛車はもちろん、向かい飛車全般でも度々出てくるので、是非とも覚えておいてほしいです。
居飛車は早めにポイントを上げよう
では、2図に話を戻します。
2図の局面では、
- ▲48玉△63銀▲38玉
- ▲48玉△63銀▲76銀
の2通りの手順が考えられます。
以下は、それぞれの手順を見ていきましょう。
▲48玉△63銀▲38玉の時
メリケン側が、▲38玉とした時の局面が、4図になります。
この局面で、お互いが駒組みを進めていくとなれば、先手は、美濃囲いに囲えて固くなるのに対して、後手は、△42銀~△54歩~△53銀などと囲っても、そこまで囲いが強くなりません。
なので、後手としては、早く戦いを起こしたい所です。
そこで、4図では、△74歩▲同歩△同銀と、先手の7筋の位を取ってしまいましょう。
5図では、メリケン向かい飛車の生命線である7筋の位を取ってしまいましたし、将来的には、△73桂~△86歩~△65歩などの攻めも狙えそうです。
5図で、▲76銀としてきても、△75歩で7筋の位を確保しておけば良いし、一番気になるのは、▲65歩からの角交換ですが、それも、以下、△65同銀▲22角成△同銀▲77桂△74銀▲46角△63金▲65歩△73角(変化4図)で大丈夫です。
なので、5図からは本格的な駒組みになると予想されます。
後手としては、左美濃に組んで、玉の堅さでも有利に立つことができます。
▲48玉△63銀▲76銀の時
では、2図から▲48玉△63銀▲76銀と上がった局面の解説をしていきます。
この▲76銀の狙いは、後手が7筋の歩交換した後に、▲75歩と7筋の位を守ることです。
ですが、後手は7筋の歩は交換しておきます。
後手は、どんな局面でも7筋の歩を交換しようとしていますが、それは以下の3つのメリットがあるからなのです。
- 1歩を持ち駒にできる
- △73桂~△65歩などと桂馬を使える
- 何かの時に△78歩と垂れ歩ができる
この3つのメリットは、局面を追っていくごとに理解してもらえると思うので、解説を進めていきましょう。
では、7筋歩交換をした後の、8図を見て下さい。
この局面で、お互いに駒組みを進めていくのは、後手は左美濃に組めるので不満はありません。
しかし、怖いのは、▲38玉△33角▲67金△22玉▲86歩△同歩▲同角(9図)と仕掛けられる手順です。
しかし、ここでは△78歩と垂れ歩をするのが好手で、後手優勢となります。
以下は、例として、先手が無理やり8筋突破を目指した手順を見ていきましょう。
一直線の手順なので、棋譜を一気に並べていきます。
▲85歩△79歩成▲77角△89と▲同飛△73桂▲84歩△85歩▲同銀△同桂▲同飛△55桂▲83歩成△67桂成▲82と△77成桂(11図)
11図の局面は、玉の堅さは後手の方があるし、駒得も後手なので、後手が優勢と言えるでしょう。
このように、振り飛車の2筋(8筋)強襲は、中央からの反撃を狙えば、そこまで怖いものではありません。
角交換振り飛車にも、良く出てくる反撃なので、ぜひ覚えてほしいおきたい所です。
まとめ
本記事を研究していくと、「なぜ、プロがメリケン振り飛車を指さないのか?」が見えてきた気がします。
玉の堅さで居飛車に負けるし、無理に仕掛けたらカウンターをくらうしで、そこまでメリケンをやるメリットがないのです。
それに、石田流やゴキ中があるので、そんなに必要でもないのが、メリケンが廃れた理由でしょう。