備忘録も兼ねて、固定資産の減損損失(減損会計)の仕訳のやり方について、まとめていきます。
簿記1級を受験する人にとっても、頻出の分野なので、これを機にしっかりマスターしてもらえればと思います。
減損損失とは何か?
減損損失とは、固定資産の価額(値段)を本来の価値まで落とすことだ、と言えます。
例えば、A社が500万円の機械を買ったとしましょう。
A社としては、その機械が500万円以上の利益を出してくれる、と予想しているからこそ、その機械を買ったわけです。
しかし、実際に使ってみると、300万円の利益しか出さないことが分かってきました。
ここで問題になるのは、A社が買った機械は、本来は300万円の価値しかないのに、貸借対照表(決算書)には500万円と計上している事です。
これでは、経営者や株主等の利害関係者に誤った情報を伝えることになりかねませんよね。
そこで、500万と計上した価額を本来の価値である300万に修正しよう、と言うのが減損損失です。
減損損失の仕訳のやり方
では、これから減損損失の仕訳について紹介していきます。
Step1.減損損失すべきかどうかをチェック
まずは最初に、その機械を減損損失すべきかどうかをチェックします。
どのようにチェックするかと言うと、その機械の「帳簿価額」と「割引前将来キャッシュ・フロー」を比べていきます。
ちなみに、帳簿価額とは、決算書上での現在の機械の価値のことで、割引前将来キャッシュフローとは、もし、機械を使い続けた時に稼いでくれる金額のことです。
計算式に書くと、この2つはこんな感じで表せます。
帳簿価額=取得原価(買った時に払った金額)-減価償却累計額
機械をこれから2年間使い続けるとする。1年目は100万、2年目は200万稼いで、使い終わった後に100万で売却するとすると、
割引前将来キャッシュフロー=100万(1年目)+200万(2年目)+100万(売却)
この計算は、減損損失をする時に、よく使うので知っておいてください。
そして、この2つを比べて、
帳簿価額 < 割引前将来キャッシュフロー
だった場合には、減損損失しません。
帳簿価額 > 割引前将来キャッシュフロー
だった場合には、減損損失をする必要があります。
その時は、Step2に移ります。
Step2.どれだけ減損損失するのかを計算する
Step1の段階で減損損失を計上することが決まったので、具体的にどれだけ減損損失をしていけば良いのかを決めていきます。
そのためにも、まずは「回収可能価額」はどれだけあるのかを調べていく必要があります。
回収可能価額とは、名前のまんまで、どれだけお金を回収できるかを示したものです。
しかし、お金を回収すると言っても、機械を使い続けて稼ぐ方法と、今すぐに機械を売って稼ぐ方法の2つの方法がありますよね。
なので、その2つを計算して、高い値段を方を回収可能価額として採用します。
今すぐに機械を売って稼ぐ方法
例えば、今すぐに機械を売ると100万で売却できるとします。
しかし、売却する時の運搬費などが2万円かかるとしましょう。
つまり、今すぐに機械を売ると、「100万-2万=98万」の金額が手元に残るという事になり、今すぐに機械を売ると稼げる値段は、98万円と言う事になります。
ちなみに、今すぐ売ることで手元に残る金額のことを、「正味売却価額」と言います。
機械を使い続けて稼ぐ方法
Step1では、「割引前将来キャッシュフロー」として機械を使い続けた時に稼げる金額を計算しましたが、ここではさらに厳密な計算をしていくために、「時間価値」を考慮して計算していきます。
例えば、「明日100万もらえる」のと「10年後に100万もらえる」のとでは、同じ100万でも全然違いますよね。
明日ならほぼ確実に100万もらえそうですが、10年後だったら取引先が倒産したりとかして、100万もらえないリスクが付きまといます。
そういう時間的なリスクを考慮した上で計算していくのが、「時間価値」と言う考え方です。
この時間価値を考慮した上で、Step1でやった計算を、もう1度やり直します。
機械を2年間使い続ける。1年目は100万。2年目は200万稼いで、使い終わった後に100万で売る。割引率は5%とする。求める式は、
100万÷1.05(割引率)+(200万+100万)÷(1.05)²=約367万
この式を理解するのは難しいですが、何となくやっていることは分かると思います。
ちなみに、時間価値を考慮して機械を使い続けた時に稼げる金額のことを、「使用価値」と言います。
Step3.減損損失を計上する
上の計算で、正味売却価額は98万円、使用価値は367万円だと分かったので、機械の回収可能価額は367万円と言う事になりました。
機械の帳簿価額を500万円とすると、
500万-367万=133万
ということになり、減損損失は133万円と言う事になりました。
最初の内は、時間価値とか使用価値とかに所でつまづきやすいですが、慣れてくるとスラスラと計算できるようになりますよ。