簿記1級でもたびたび出題されるのが、「資産除去債務」。
今回は、勉強していない人でも理解できるように、分かりやすく解説していきます。
資産除去債務とは?
資産除去債務とは、建物や機械などの有形固定資産を除去する時に、法律にのっとって適切に除去しなければならないものの事です。
例えば、建物や機械によっては、土壌汚染などの環境破壊や人体に影響の出る物質を放出したりしますが、除去の際には、自然環境を必ず機械を使う前の状態に直す必要がありますよね。
その時にかかる費用のことを、資産除去費用と言います。
資産除去債務の仕訳方法
資産除去債務の仕訳方法は、例題の流れを追って説明していきます。
有形固定資産を購入した時
トーマス社は、14年4月に機械を1000円(使用期間3年)を現金で購入した。当社は機械を使用後に除去する法的義務があり、除去時の見積支出額は、100円だった。なお、割引率は5%とする。
資産除去債務がある固定資産を購入した時には、以下の様に仕訳をしていきます。
(借) 機械 ××× (貸) 現金 1000
資産除去債務 ×××
資産除去債務の費用は、将来的に必ず支払わなければいけません。
上の例題では、機械を購入した時点で、100円の支払いが確定されたも同然なので、資産除去債務の分も機械の取得原価に含めます。
しかし、ここで注意したいのは、資産除去債務の時間価値を考慮する必要があることです。
時間価値とは何か?
時間価値とは、要は、「明日10万円をもらうのと10年後に10万円もらうのは、意味が違うよね」と言うことです。
明日であれば確実に10万もらえそうですが、10年後だと、会社が倒産したりとかして本当に10万もらえるかは分かりませんよね。
このように、将来のことで確実性がない物に対しては、そのリスクを考慮して仕訳をしていこう、と言うのが時間価値と言う考えです。
具体的に時間価値を使ってどのように仕訳するかと言うと、上の例題では「3年後に100円を払う」と「割引率が5%」と書かれているので、
100÷(1.05)³=約86
よって、資産除去債務の機械が購入した時の仕訳は、
(借) 機械 1086 (貸) 現金 1000
資産除去債務 86
となります。
決算時(1年目)の仕訳
資産除去債務の固定資産の場合、決算時でやらなければいけない仕訳は、以下の2つです。
- 減価償却費の計上
- 資産除去債務の調整
それぞれ説明していきます。
減価償却費の計上
決算日に、当該機械を残存価額ゼロ、耐用年数3年の定額法で減価償却していく。
機械の取得時に、機械の帳簿価額を1086円(現金+資産除去)と計上しているので、これを使って減価償却していきます。
具体的な計算を示すと、1086÷3=362円。
(借) 減価償却費 362 (貸) 減価償却累計額 362
となります。
資産除去債務の調整
資産除去債務の帳簿価額は、時間価値を考慮して計上しているので、決算時に時の経過によって増加した分を追加計上します。
86円×0.05=約4円
よって、決算時の仕訳は「利息費用」と言う勘定科目を使って、
(借) 利息費用 4 (貸) 資産除去債務 4
と書きます。
ちなみに、「利息費用」は損益計算書には、「販売費及び一般管理費」の部分に記入していきます。
減価償却費と同じ場所ですね。
決算時(2年目)の仕訳
2年目の決算時では、ほぼ1年目とやることは変わりません。
(86+4)×0.05=90×0.05=約5
としなければいけない、と言う事です。
(借) 利息費用 5 (貸) 資産除去債務 5
となります。
また、減価償却費は定額法で計上しているので、1年目と全く同じ仕訳です。
(借) 減価償却費 362 (貸) 減価償却累計額 362
決算時(3年目)の仕訳
3年目も大体同じ仕訳の流れですね。
(借) 利息費用 5 (貸) 資産除去債務 5
減価償却費 362 減価償却累計額 362
ですが、3年目は機械の除去する必要があるので、その仕訳もしていく必要があります。
3年目の決算時に、機械を除去する。その際、除去費用を110円現金で支払った。
取得時には、資産除去債務を100円と見積もって計上していました。
しかし、実際には110円かかっているので、以下の様に仕訳していきます。
(借) 資産除去債務 100 (貸) 現金 110
履行差額 10
ちなみに、履行差額は損益計算書には、「販売費及び一般管理費」に計上します。
つまり、減価償却費とか利息費用と同じ所に記入するわけです。
資産除去債務の計上部分
資産除去債務は負債として扱うので、決算書(賃借対照表)の「負債」の所に計上します。
買掛金や借入金などと同じ所だ、と覚えておけばOKでしょう。