ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)は、バイオテクノロジーにおいて、タンパク質を分子量に基づいて分離するために用いられる電気泳動技術です。
一般に、タンパク質は同一分子内にプラスとマイナスの両方の電荷を持つ両性体です。
そのため、電気泳動時にタンパク質を一方向に移動させるために、タンパク質分子に一様な負の電荷が与えられます。
この負電荷を与えるのが、陰イオン界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)です。
SDSはタンパク質の非共有結合力を乱すので、ネイティブなタンパク質はSDSによって変性する。
SDSとは
SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)とは、親水性の頭部と疎水性の尾部からなる陰イオン性洗浄剤のことです。
そのため、溶解すると広いpH領域で分子が正味の負電荷を形成する。
SDSの構造を図1に示す。
図1:SDSの構造
SDSはどのようにタンパク質を変性させるのか?
SDSは洗浄剤であるため、タンパク質の三次構造が破壊され、折りたたまれたタンパク質が直鎖状になってしまう。
さらに、SDSは線状のタンパク質に一様に結合する。
1gのタンパク質に対して、約1.4gのSDSが結合する。
したがって、SDSはタンパク質を正味の負電荷で一様にコーティングする。
この負電荷は、タンパク質のアミノ酸が持つ様々な種類のR基の固有電荷を覆い隠してしまう。
また、タンパク質の電荷は分子量に比例する。
SDSによって直線化されたタンパク質分子の幅は18オングストロームであり、タンパク質の長さは分子量に比例する。
図2に、タンパク質とSDSの相互作用を示す。
図2:SDSとタンパク質の相互作用
SDSの役割とは何か
あるタンパク質のアミノ酸のR基は、プラスまたはマイナスの電荷を帯びていることがあり、タンパク質は両性分子となっています。
そのため、ネイティブな状態では、同じ分子量の異なるタンパク質は、ゲル上で異なる速度で移動する。
このため、ポリアクリルアミドゲルでのタンパク質の分離は困難です。
タンパク質にSDSを加えると、タンパク質が変性し、均一に分布した正味の負電荷で覆われる。
これにより、電気泳動中にタンパク質がプラス電極に向かって移動することができる。
つまり、SDSはタンパク質分子を直線化し、R基の様々な種類の電荷を覆い隠してしまうのです。
つまり、SDSでコーティングされたタンパク質の電荷と質量の比は同じであり、ネイティブタンパク質の電荷に基づく移動の差は生じないのです。
図3は、赤血球膜タンパク質のSDS-PAGEです。
図3: SDS-PAGEの様子
SDS-PAGE以外にも、核酸抽出の際に細胞膜を破壊し、核酸:タンパク質複合体を解離させるために、SDSは洗浄剤として使用される。
結論
SDS は陰イオン界面活性剤であり、様々な種類のバイオテクノロジー技術において洗浄剤として使用されている。
タンパク質の3次構造を変性させ、直鎖状のタンパク質分子を生成する。
さらに、変性したタンパク質と均一に結合し、あらゆる種類のタンパク質に均一な電荷と質量比を与える。
SDSは、タンパク質のアミノ酸のR基の電荷をマスキングすることで、タンパク質分子に正味の負の電荷を与えている。
したがって、SDSによって変性したタンパク質の電荷は分子量に比例するため、PAGE上では分子量に基づいたタンパク質の分離が可能になる。